ロレックスとは

1905年、懐中時計が主流だった時代に腕時計のニーズを予見していたハンス・ウイルスドルフは、ビジネスパートナーと共にロレックスの礎となる時計専門商社「ウイルスドルフ&デイビス社」をロンドンに設立した。
実用的な腕時計を製造するためには、高精度のムーブメントと気密性の高いケースが不可欠であると考えたウイルスドルフは、ビエンヌ(スイス)の時計製造会社「エグラー社」と契約を結び優れたムーブメントの供給元を確保した。
1907年には取引の簡素化を図るため、ラ・ショー・ド・フォン(スイス)に事務所を開設し、翌年の1908年には「ROLEX」という名称を商標登録した。
その後も精度向上に力を注ぎ、1910年、ビエンヌの時計学校(のちのビエンヌ検定局)にて公式精度検定最高レベルのクラスAを獲得し、さらに1914年には、キュー天文台(イギリス)でも精度A級認定を受けるといった腕時計初の快挙を成し遂げた。

続いてウイルスドルフは、気密性の高いケースの確保に乗り出した。1926年、オイスター社が開発した金属の塊をくり抜いたケースにねじ込み式のリューズと裏ブタを組み合わせた防水ケースの特許を取得し、この新型ケースには二枚貝に由来する「オイスター」の名が与えられた。
これにより腕時計最大の弱点は克服され、それを証明するかのように、翌年(1927年)、ロンドンの速記記者メルセデス・グライツ嬢がドーバー海峡横断に成功した際、彼女の腕にはロレックスの「オイスター」があった。
そして、グライツの偉業とともに「泳げる腕時計」の存在は世界に衝撃を与えるニュースとなった。

さらに完全な防水性を確保するためには、リューズの締め忘れによる浸水を防ぐ必要があった。その解決方法は、リューズによるゼンマイの巻き上げを必要としない自動巻き上げ機構の開発だった。
そして1931年、腕時計として世界初となる全回転方式ローターでの自動巻き上げ機構「パーペチュアル」が開発され、ウイルスドルフが目指した実用腕時計の原形が完成した。
そして創業40周年を迎える1945年、既に開発済みだったオイスターケースとパーペチュアル機構に加え、文字盤にデイト表示用の小窓を備えた「デイトジャスト」を発表した。
このデイト表示機構は「デイトジャスト機構」と呼ばれ、1955年には午前0時で瞬時に日付の切り替えが行えるよう改良される。こうして後に「ロレックス三大発明」と呼ばれる革新的な発明によって、日常生活において重要な機能を備えた実用腕時計の1つの完成形が誕生した。

1950年代になると、時計の機能の枠を超え、過酷な環境下でも最高のパフォーマンス
を発揮できるプロフェッショナルモデルの開発を推し進め、1953年には究極のアドベンチャーウォッチ「エクスプローラー」と回転ベゼルを搭載した世界初のダイバーズウォッチ「サブマリーナー」が発表された。
1955年にはパン・アメリカン航空の依頼により国際線パイロットのための「GMTマスター」が開発され、ロレックスの信頼性とステイタス性は、これらのモデルを使用するプロだけではなく、一般のユーザーまで知れ渡っていった。
1960年代には、深海潜水艇「トリエステ号」が潜航深度10,916mという世界記録を樹立した偉業にも同行し、オイスターケースの防水性を改めて実証した。後にこれらの成果をもとにプロダイバーのためのモデル「シードゥエラー」が開発されることになる。
また、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ(アメリカ)の完成に伴い、レーサーのためのモデル「デイトナ」を発表するなど各分野のプロフェッショナルのための時計開発が行われた。

このようなチャレンジ精神は現代まで脈々と受け継がれ、完全自社製クロノグラフムーブメント開発(2000年)、セラクロムやパラクロムといった新素材開発(2005年)、3900m防水を可能にするリングロックシステム開発(2008年)、
ロレックス初となるコンプリケーション機構(年次カレンダー)開発(2012年)といった原動力となっている。そして、現在も実用性を追求して進化を続けている。